第22回 香港ビジネス懇話会
『中国で体験した知的財産権管理の実態(IT業界編)と日本復興を加速させるクロスボーダービジネスの展望』
講 師:株式会社クロスボーダープランニング 代表取締役 原 義弘氏開催日:2011年5月25日(水)
所属名:ビジネス交流委員会
場 所:千代田区内幸町 「フォーリン・プレス・センター」
1988年マイクロソフト日本法人に入社以来21年間に亘りIT業界で活躍されてきた原 義弘氏を講師にお迎えしてマイクロソフト中国法人での経験談を中心に、中国におけるソフト偽造品の実態や不正使用ソフトウェアライセンス問題、知的財産権保護対策の動向など日本企業が留意しなければならない管理のポイントを具体的な事例を交えてお話いただきました。さらに日本の匠といえる中小規模事業所のユニークな技術、ノウハウをブランド化していかに海外へ発信できるかなどのクロスボーダービジネスへの取り組みについても熱く語られました。
原 義弘氏のプロフィール:
1987年日本大学(理)機械工学科卒。㈱CSKを経て1988年マイクロソフト日本法人に入社。
大規模から中小企業市場まで広く担当し、チャンネル開発をはじめとしたパートナープログラムの根幹となるモデルづくりを行う。2007年(微軟(中国)有限公司)に出向し日系企業担当グループを指揮して正規版ソフトウェアライセンスのセールスプロモーションを行う。2009年にマイクロソフト日本法人から中国法人に移籍、Japan Sales Directorとして引き続き日系企業向けのビジネス開発を行う。
2010年マイクロソフトを退社、帰国。2010年10月㈱クロスボーダープランニング創立。
講演の要旨
1.IT(PC)の進化・発展
1986年PCユーザー3,100万人の時代からWindow95、インターネット、電子メールなどデジタル化が進み、さらに個々の独立PCからNetwork PC, Broadband PCへと進化が続き、今やハブとしてのPC、情報共有、コラボレーション情報検索などのPCとどんどん高度化してユーザー数も世界で10億を超える時代となっている。
2.ITの進化を背景とした企業におけるビジネスリスクの変化
かっては市場、信用、財務リスクなどが企業の主なビジネスリスクであったが、現在ではITリスクが大きくなってきている。データ改ざん・流出、システムダウン、不正アクセスなど企業はビジネス面のみならずIT面でのリスクを認知しなければならなくなっている。
3.中国での不正ソフトウェアライセンス使用の実態
偽造・不法ソフトウェアの入手経路は不正ダウンロード、密輸入、非正規商人からの購入など様々で、中国でのソフトの違法コピー率は78%で(日本は20%)世界でも飛びぬけている。マイクロソフト中国法人でも不正使用の摘発に躍起になっているが、
23,000社を超える日系進出企業もソフトライセンスの理解不足、言葉のコミュニケーション不足などがあり、一方マイクロソフト側にも日系企業に正規ソフト購入を強引に迫るといったトラブルが多発、日本語によるサービス/サポートやライセンス取得・正規購入のアドバイスが欲しいとのリクエストがあったことが原氏の中国赴任の背景となっていた。
4.中国での取り締まり強化
国家版権局が中心となり法律・法規の実施徹底を厳格に行いはじめた。またソフトウェアライセンスのみならず著作権などの知的財産権保護の厳しい対策が次々に打ち出されている。このような状況の変化を踏まえ、日本企業は海外子会社の著作権法違反などの違法行為が本社にまで波及するリスクも考え十分に注意する必要がある。
5.まとめ
現在使用しているソフトが正規に手続きを踏んだものか、また身近な所では会社の仲間同士でソフトの貸し借りしたりコピーしたりすると違法になるなどライセンス(著作権法)の仕組みをよく理解して、会社/個人で使用しているソフトウェアライセンスに関して適正に使用されているかをもう一度チェックをしてみましょう。
知的財産権保護は経済利益を守る重要な要素です。すべての発明/製作物に対して対価を払って使用することが肝要です。
講演終了後に質疑応答(Q&A)が行われました。
Q:中国でソフトを使用する際は、日本から持ち込んだほうがよいか、現地で購入したほうが
よいのか?
A:日本で契約したソフトウェアライセンスを中国に持ち込む場合は、メーカーによっては持ち出し禁止のところもあり、さらに輸出手続きが必要で、中国では持込には全て許可取得の手続きが必要。したがって中国国内の正規代理店経由ソフトウェアライセンス使用許諾書を現地で購入するほうがよい。
Q:中国で不正コピーなど著作権違反の被害にあった際は何処に訴えればよいのか?
A:先ずは著作権の窓口である国家版権局へ駆け込むことになります。
Q:海外での知的財産権に関する相談はどこに行けばよいのか?
A:「東京都知的財産総合センター」という自治体支援センターがあり、著作権・知的財産権にかかる相談・調査や侵害された際の調査・鑑定・警告費用の助成の窓口になっているのでここに相談されると良いでしょう。