第30回 香港ビジネス懇話会

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第30回 香港ビジネス懇話会 第30回記念特別講演
『日本企業の隠された資産・知的財産権』
      〜知財を活用すれば日本経済は復活する〜
講師:ヘンリー幸田氏(米国弁護士)
開催日: 2012年11月14日(水)15:00〜16:45     
所属名:ビジネス交流委員会
場所:フォーリン・プレスセンター(日本プレスセンタービル)
    
知財とは何のことですか?
 米国アップル社が韓国サムスン社の製造するスマートフォンGalaxyが自社の特許権を侵害していると訴訟を起こし、サムスン社はこれに対抗して逆にiPhone やiPadを対象に特許権侵害の訴訟を提起したりと、現在、多くの国で様々な訴訟が繰り広げられています。また、中国では2010年10月以降知的財産権の侵害や偽ブランド・粗悪品などの取り締まりの結果、28万1400件(123億元)の違反が摘発されたと最近の現地紙で報じられています。
 「知的財産権」(Intellectual property)とは普段あまり聞きなれない言葉かもしれません。人間の知的活動によって生じた無形の知的財産に対する“財産権”の総称とされ、発明家や弁護士など特別の人が取り扱うものだと思われていますが、特許、商標、著作権などの経済全般に幅広く関連している身近なかつ重要なものです。
 このように知的財産権(以下‘知財’と略称する)の関心が高まるなか、日本香港協会は第30回目の香港ビジネス懇話会を記念して、米国弁護士で、また日本でも外国法事務弁護士の資格を持つ国際知財法・ビジネス法の分野で国際的に活躍されているヘンリー幸田氏に講演をお願いして、知財の歴史、米国特許制度の発展の歩み、知財をめぐる世界の潮流、米国におけるIBMなどの企業の知財戦略、特許を巡って暗躍するパテントマフィアなどの動きなど具体的な実例を引用しながら詳細な説明をいただきました。さらに米国に比べ日本が知財制度に対する意識改革が遅れていることや
裁判官の知財処理に対する信頼が低いことから日本では極端に訴訟件数が少ないことが指摘され日本経済・企業の復活ために必要な未来の知財戦略が提示されて日本型知財立国の実現が重要だと強調されました。
  <ヘンリー幸田氏のプロフィール>
  1943年東京生まれ。1966年学習院大学理学部化学科卒業。1970年明治大学法学部卒業。1993年ぺパーダイン大学法学部特別研究科修了。協和特許法律事務所、スペンスリー・ホーン法律事務所(米国)を経て1977年コーダ・アンドローラ国際特許法律事務所(米国)所長、2007年クイン・エマニュエル法律
  事務所パートナー、2011年〜DLAパイパー法律事務所東京事務所東京マネージャーに就任。2005年〜
  創価大学ロースクール教授として教壇でも活躍中。
  ラテン音楽、シャンソン、フラメンコ、ミュージカル、ワインテイスティング、ボクシング、ゴルフ、ヨガなどのほかにトーマス・エジソン発明品収集、ダ・ビンチ研究、ギリシャ・ルネッサンス研究など幅広い趣味を有する。

[講演の要旨]
1.「知財」という用語は新しい言葉と思われるかもしれないが、1980年代までは知的所有権と言われてきて、紀元前6世紀、シバラス共和国での世界最初の専売権(元首のコックが独創的な料理を考案、料理作りの独占権を認められた)までさかのぼることが出来る。1474年ベネチア共和国で聖書などの印刷物を独占する特許制度がスタートした。1623年英国で蒸気機関など多くの発明がなされたが、この産業革命を背景にして近代特許制度が生まれた。1790年米国でも特許法が制定され、日本ではこれからずっと遅れ1885年に欧米企業と貿易対策のため専売特許条例と実用新案制度が導入された。

2.知財をめぐる世界の潮流は大きく変わってきている。
 ①知財価値が上昇・・・訴訟の増加、損害賠償額の高騰
 ②企業資産がハードからソフトへ移行・・・マイクロソフト、アップル、グーグルの資産の90%超はソフト
 ③新興国の台頭・・・中国、韓国、台湾、インド
 ④インターネットの普及・・・国際経済活動における変動の急速化
 ⑤自ら製造したり、サービスを提供しないにもかかわらず特許権を材料にして巨額の賠償金や
 ライセンス料を得ようとするパテント・マフィアが出現して、弁護士、経済学者、金融プロ、心理学者などによる訴訟戦略専門集団が法廷で力をふるうようになりビジネス・モデルや裁判のやり方が大きく変わった。

3.上記の世界の潮流の変化を具体的にグラフ、数表で説明がなされた。
  1)主要国家間の特許出願数の推移では、1995年は日本、米国、中国、韓国の順であったが日本は2000年から減少に転じ、米国、韓国、も件数を伸ばしているが、政府がバックアップしている中国は2010年で1995年の5倍と急激な増加を見せて、日本が特許面で見劣りしていることがわかる。損害賠償額もIT企業や薬品会社が被告に名前を連ねているが、一件1500億円を超えるものもあり損害額が巨額化している。

4.IBM,アップル、グーグルの代表的三社のパテント・ポートフォリオ戦略の中身が紹介された。

5.日本企業が今後とるべき未来の知財戦略は?
 1)特許を取得することが強欲で独占することだという特許性悪説から解き放たれて 知財制度に関する基本的な意識改革が必要。
 2)日本は特許を収益性を無視して薄く広く守ろうとする。非収益型分野は捨てて、防衛型から収益型への変換を図ることが必要。特許出願も分散方式(防衛)から集中方式(攻撃)に変えるべきだ。
 3)IPS細胞の発明のように国家的・創造的取り組みが必要。
 4)発明家・弁護士任せとせず金融的手法による知財評価方法の構築が必要で、マイクロソフトなど米国企業のソフト価値の確立の先例を研究すべき。
 5)訴訟制度の改革:特許訴訟件数は米国3000件、中国6000件、日本100件。このままではアジアで日本の裁判所は敬遠されて訴訟は他国に流れていくだろう。     

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