第33回 香港ビジネス懇話会
『東アジア物流における香港の位置づけ』
講師:上海スーパーエクスプレス(株) 営業部長 渡辺 格(わたなべ ただし)氏
開催日:2013年8月28日(水)15:00〜17:00
所属名:ビジネス交流委員会
場所:フォーリン・プレスセンター(日本プレスセンータービル)
<渡辺 格(ただし)氏のプロフィール>
1977年、流通経済大学経済学部卒業、日本通運入社。
1996年、香港日本通運海運貨物支店次長。
日通国際物流(中国)海運部長兼天津支店長、東アジア地域海運貨物部長を歴任し、2013年6月 香港より帰任、引き続き上海スーパーエクスプレス(株)に日本通運から出向して、営業部長に就任
現在に至る。
入社後、国際海上輸送のフォワーディング業務に携わり、カンボジア、東ティモール、米国などのプロジェクト輸送も担当してきて、海外勤務経験は1982年の米国を皮切りに香港、上海など通算18年に及ぶ。香港時代には極東発米国向けの仕組み作りを行った。
ビジネス懇話会としては今まであまり取り上げられたことのない物流・ロジスティック方面のテーマを今回取り上げて、香港・中国を初め世界各地で長い間国際物流業務に精通された渡辺部長に、具体的な実例も交え興味深いお話をしていただきました。
[講演の要旨]
■港湾としての香港
世界主要港のコンテナ積み下ろし数量は1991年1位シンガポール、2位香港で、2001年は1位香港、2位シンガポールであったが、2011年になると1位上海、2位シンガポール、3位香港となり4位に深圳が肉薄してきており、以下、世界ベストテンの中に中国の港が5つを占め、数量を大きく伸ばしてきている。
■香港の港湾の特徴
クワイチョン(葵涌)の岸壁での積み下ろしは香港全体の7割を占めるが、残りがそれ以外の内河ターミナル、さらにかっては盛んであった沖合でのはしけによる積み下ろしは激減している。
■米国向け積数量
中国からの貨物を香港で積み替えている数量が圧倒的で、東南アジア各国の貨物を米国に向け積み替えている台湾(高雄)、シンガポールや、積み荷のほとんどが自国産品という韓国(釜山)日本(東京)とは大きく異なっている。香港の後背地が大きな中国であることが香港の強みといえる。
■港湾としての香港の強み
積み替え(トランシップ)がメインの港で、中国に比べ船積・通関手続きが早いという強みがあるが近接する中国港湾からコスト面での追い上げを受けている。
されど依然として、香港の港湾は華南地区の有力な港湾である。
■中国・香港での物流の環境変化と倉庫ビジネス
保税区の拡大や委託加工貿易から一般貿易取引へ、さらに中国国内取引・国内販売の変化サプライチェーンマネージメントの高まりなどもあり顧客の要求に対応した品質・コスト・納期を重視したタイムリーな供給が求められている。中国ではまだ、小口の運送業者がブローカーを経由して集配、運送しているためシステム化されていない。そのため国内輸送は汚れ・濡れ
紛失・遅延が頻発しているのが実情。
日本通運では専門チームによる24時間貨物トレース、イレギュラー・ケース対応策の策定、最適かつ安全な積み込み作業の自社作業員で実施を行い、最終的にターミナルの自営化を目指し香港日通はクワイチョン(新界地区)に大規模・多機能な貨物ターミナルを設営した。香港は倉庫を含め家賃の値上がりが激しく、このターミナル設備も賃貸のため、運営コストをいかに抑えるかが今後の課題である。
講演の最後に質疑応答が行われた。
・日本が韓国に積み替え扱い量(トランシップ)で負けている理由は?
・多機能ターミナルは設備賃貸で運営しているとの事だが、家賃値上がりリスクのある香港でなぜ、自前の設備としなかったのか?
・中国本土で広範囲に長距離トラック輸送や、多機能貨物ターミナル展開が出来ていない背景は?