第35回 香港ビジネス懇話会

第35回 香港ビジネス懇話会 
『日本メディアの中国語ニュース発信』
講師: 日経中文網発行人  奥村幸弘 氏
開催日: 2014年1月10日(金)15:00〜17:00
所属名:ビジネス交流委員会
場所:フォーリン・プレスセンター(内幸町 日本プレスセンータービル)

<奥村幸弘氏のプロフィール>
早稲田大学法学部卒。1974年 日本経済新聞社入社。東京、大阪編集局、札幌報道部記者を経て、香港、シンガポール、マレーシア支局長。天安門事件、アジア通貨危機、華人ネットワークなどを取材。東京編集局アジア部長、論説委員、日経中国社(香港)社長を歴任。海外駐在期間は通算14年でうち10年は香港に駐在し中国、台湾、フィリピンなど華人経済圏の読者に香港で印刷した日経紙を提供してきた。現在は日経執行役員・日経中文網発行人、日経創意(北京)広告有限公司董事長。
   
[講演の要旨]
 ■日本の大手メディアの中国語ニュースサイト(日本・世界の情報を中国語で伝える)
共同網(共同通信:2001年開始)、日経中文網(日本経済新聞:2012年開始)、朝日新聞
中文網(2012年開始)、NHK環球広播網(NHKの国際放送)があるが、中国メディアの日本語ニュースサイトの方が歴史的・量的にも進んでいて輸入超過状態で後手に回っている。
 ■主要中国メディアの日本語ニュースサイト(中国情報を日本語で伝える)
人民網(人民日報:1998年)、新華網(新華社通信)、中国網(チャイナネット)、中国国際放送局(1941年大陸戦争時代に延安から日本語放送を開始した長い歴史をもつ),中国通信社(CNS:中国主要メディア情報を取り扱う) など
 ■世界の英語メディアの中国語ニュースサイト・フィナンシャル・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、BBC(英)などがあり2002年からスタートして2013年には主要各社が出そろった。
■近年、中国語のニュースサイトが急増している背景は?
   ◎中国の国際的な地位、経済力の向上----市場価値の拡大、海外情報ニーズ増加
   ◎各メディアの国際化戦略強化----新聞発行部数が頭打ちとなり、電子媒体(コンテンツ、広告)が重視されるようになってきた
   ◎膨大な中国語人口と中国国内でも多様な情報を中国語で知るニーズが高まる
■日経中文網の運営方針
基本的には日経の日本語記事をベースに北京で中国人スタッフが中国語に翻訳してサイトに掲載、翻訳の関係から記事は一日遅れとなるので、速報記事より評論などのじっくり読ませる長文記事が多くなる。記事の選択は日本人には言葉の問題や中国人の好みがわからないので記事の選択は中国人スタッフがおこなっている。但し、現地スタッフに任せっぱなしにすると中国サイドに偏った政治がらみの記事が多くなり、日本の社会情勢などキメの細かいニュースはウエイトが低くなることになりかねないのが悩み。また米英系メディアでは、米国大学で学んだ中国語・英語に堪能な中国人を本社で採用し経験を積ましてから中国に戻してくるケースが多いのに比べ、日本メディアでは同じような採用・訓練が出来ず、言葉の壁と共に日本語編集要員採用・要員確保の問題が残る。
「日経中文網」は立上げの頃はなかなかうまくいかなかった。尖閣問題、アベノミクスなどが話題になるにつれてここ一年で読者数も増加し軌道に乗りつつあるが、広告収入を原資として無料配信していることもあり採算はとれていないのが実状。
■中国の海外メディア規制
北京、上海など地域によって規制が統一されておらず、判りにくい。
・インターネット規制(ニューヨーク・タイムズ、BBC,朝日などの中文網は中国内からアクセス不能という長期遮断規制を受けている)
・新聞機構からの対中投資は原則禁止
・中国国内からのニュース発信は事実上海外メディア不可
・中国内駐在記者への報道ビザ発給制限 などがあげられる。

「日経中文網」では当局の情報遮断などの規制を避けるために本社の依頼により、日経紙記事を翻訳しているだけと位置付け、中国内での取材活動は自粛している。しかしながら中国人は自国新聞の記事を国家統制されたものとみて中国メディア報道への懐疑・不信があり既報情報が日本の新聞でどう取り扱われているかを中国語で確認・補足したいという欲求は強いものがあり、現地での日本メディアの中国語ニュースへの需要の裏付けとなっている。

■以上のビジネス懇話会レポートをご覧になった方は是非、「日経中文網」のサイトhttp ://cn.nikkei.com/ で実際に閲読(無料)して中国語の記事を体験して下さい。
                                                    




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